2019年4月30日火曜日

女神イナンナとフルップの木_「神話と占い」(その50)_






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男たちの逆襲
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改革の波は突然のように現われ、母権制社会を崩壊させました。紀元前二六世紀頃、シュメールの都市国家ウルク(メソポタミアの都市国家、紀元前五○○○頃以前のウバイド期から文明が見られ、第一王朝~第六王朝まで栄えた。パルティア帝国支配下の起源前後にも人の移動があったがササン朝ペルシア時代に放棄された。現在のイラク)に、英雄ギルガメシュが登場します。


ギルガメシュはキシュの王アッカに攻められたとき城壁を築いて撃退し、反対にキシュの王を捕らえ敵国を征服したと伝わる偉大な王で、おそらく実在の人物です。アッシュール・バニパル(新アッシリア王、治世紀元前六六九~前六二六)王の図書館跡などから発見されたギルガメシュ関連の叙事詩は数種類あり、大別すれば実話性の高い「アッカとの戦い」と、そうでない英雄譚とに分かれます。


英雄譚としてはレバノン杉の森の番人フンババを殺す冒険譚「フンババ退治」、女神の使徒獣を殺したせいで〝女神の呪い〟を蒙る悲劇「天牛殺し」、そして〝大洪水を生き抜いて神に列せられた人間〟ウトナピシュティムに会って〝若返りの草〟を入手するが、水浴中蛇に盗まれてしまう〝バナナ型神話(人間が永遠の生命を失った理由を説明する神話のこと。フレイザー)〟「洪水物語」が知られています。


ギルガメシュ叙事詩と言えば『旧約聖書』創世記に登場する「ノアの方舟」の原型、「洪水物語(シュメール洪水伝承ジウスドラ、古バビロニア洪水伝承アトラム・ハシスに続くもの)」ばかり話題になりますが、多くの研究者が注目するのはギルガメシュにかいま見る人間の「覚醒」と、「自立」です。



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あるとき女神イナンナ(バビロニア名イシュタル)が聖園で育てていた樫の木の根元へ可愛くない蛇が棲みつき、小枝には獅子頭のアンズー鳥が巣を作り、幹に悪霊リリスがとり憑いた。太陽神ウトゥ(バビロニア名シャマシュ)に頼んだが何もしてもらえず、青銅の斧を奮い悪霊を追い払ってくれたのはギルガメシュだった。

蛇は消え、アンズーは山の頂へ飛び去り、リリスは荒野へ遁れた。ギルガメシュはまた、樫の洞に女神イナンナのための玉座と寝台を造ってくれた。女神イナンナはギルガメシュが樫の根からプックとメック(おそらく太鼓とバチ)を作ることを許し、褒美として与えた



【メソポタミアの神話】ニネヴェ出土の粘土板、シュメール語「フルップの木」
Translated Diane & Samuel Noah Kramer
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