2019年4月1日月曜日

神話における、蘇りのあとの短命さ_「神話と占い」(その21)_






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死んで蘇(よみがえ)ることの意味
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物語における「冥界へ行って地上へ戻る」という描写は、多くの場合「一度死んで甦る」ことの暗喩です。そしてエリシャの段で言及したとおり、物語のなかで甦りをした人間や神々は魂の力が弱く、誰かに魂を分けてもらえないと長く生き延びることができません。ですから冥府探訪した人間や神々は、地上へ戻ってもその前ほどには活躍しないのが神話の定型のひとつです。




たとえばディオニュソスの随行者(ティアソス)として働いていた楽人オルペウスは、死んだ新妻エウリュディケを諦めきれず得意の竪琴もしくは歌を駆使して冥府の泉へ降りて行きますが、妻奪還に失敗したあとは人が変わったように冷たい性格になり、女たちの恨みを買い同行バッケーの手で殺されます《オウィディウス『変身物語』「オルペウスとエウリディケ」「オルペウスの死」》

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伊邪那美神(いざなみのかみ)を失った伊邪那岐神(いざなぎのかみ)は、オルペウスと同じく冥府を訪れ櫛に灯した火を頼りに妻を求めてさすらい、変わり果てた伊邪那美神(いざなみのかみ)の姿を目の当たりにすると地上へ逃げ帰って、最期の力を振り絞るように天照大御神(あまてらすおおみかみ)、月読命(つくよみのみこと)、建速須佐之男命(たけはやすさのおのみこと)を産み落とします。それから創造神としての役割を三貴柱それぞれに委任し、あとは近江(滋賀県)へ隠居してしまいます《『古事記』上巻「禊祓と三貴柱」》

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冥府へ連れ去られた女神ペルセポネ(ローマ名プロセルピナ)は母神デメテル(ローマ名ケレス)の願いでいったん地上に戻るものゝ、一年のうち三分の一は冥府ですごさなければなりません(一年の三分の一は死んでいるということ)

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ディオニュソス神は生還後すぐまた降って冥界の王になり、イエス・キリストは復活後わずか四十日でまた昇天してしまうのです。。






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