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兵士を助けるディオニュソス神
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神の呪いのせいで帰国を目前にカペレウス岬(ギリシア)で難破したアルゴス勢(ギリシア)の生還者は、疲れきった体を引きずるように陸地を進んで故郷を目指したが、船を失って食料のないところへ冬の嵐が到来し立ち往生する。兵士たちが思わず「どの神さまでも良いから、とにかく助けてください」と祈ったところ、暴風の中にたちまち洞窟があらわれ、奥にはディオニュソス神の神像が据えられ、雨を避ける山羊の群れが集まっていた。
兵士たちは山羊を捕らえて飲食し、その毛皮で寒さをしのいだ。嵐が収まるとすぐに出発したが、木で出来たこの神像を忘れず持ち帰り、神殿を築いて故国に奉った。
【ギリシアの神話】暴風の中に顕現する洞窟の神ディオニュソス
パウサニアス『地理史』第二巻アルゴス
⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒パウサニアス『地理史』第二巻アルゴス
ディオニュソス神の従弟(生母アガウェーはゼウスに選ばれた乙女セメレの姉)のテバイ王・ペンテウスは高い樹木からぶら下がって死にました。ペンテウスの顔はディオニュソス神とうりふたつでした。そのため、ペンテウスの伝承はディオニュソス神自身がぶら下がって死んだ暗喩となっており、神の仮面をかぶせて犠牲を殺す、ディオニュソス神祭儀の説明になっています。
布教初期の頃のディオニュソス神の祠は、たいてい木造の〝高床式〟神殿でした《ストラボン『地理学』四巻四章「サムニテの女たち」より、マルセル・ドゥティエンヌ『ディオニュソス』》。これは「高い木の梢」から見守ってくれる〝樹木神〟ディオニュソスを招聘するため建立されたものだといいます。
パウサニアスが記録した神話では、ディオニュソス神は、中空に浮かび上がる洞窟に住んでいる神です。ディオニュソス神は、大国主神と同じく「〝中空の〟宮」に住む神なのです。
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