2019年4月11日木曜日

至高神ゼウスと酒神ディオニュソスの正体_「神話と占い」(その31)_






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 ディオニュソスは、父なるゼウスの仮の姿
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それにしてもなぜ、ディオニュソス神は「中空=創造神の領域」に顕現したのでしょう。デメテルのような〝豊穣〟女神たちや〝至高〟神ゼウスが「創造神」の位置にいてもさほど違和感がありませんが、テーベの王女セメレに受胎しゼウスの腿から生まれた、「半分人間=人間神」であるディオニュソスが「創造神」であるとなれば、さすがに奇異に感じます。いったい酒神・歳神ディオニュソスに、創造の力はあったのでしょうか。



実はディオニュソスは別名「ディオニュソス・ザグレウス」とも言い、〝全知全能の神(当然、創造の力はある)〟たる〝天界の父〟ゼウス、別名「ゼウス・ザグレウス」と同一の神です。そもそも「ディオニュソス」も「ゼウス(ローマ名「ユピテル」「デウス」)」もサンスクリット語「天界の父(Dyauspitar=ディアウス・ピター)」が訛ったもの《ストア派クレアンテス(前二六二~二三二頃)はギリシア語動詞「生きる(ゼーン)」の名詞形と説明、『ゼウス賛歌』》、名親である「ディアウス」とは「天」「光」を表し、稲妻ヴァジュラを操る嵐神インドラ・火神アグニの父神〝天空の牛〟です《『リグ・ヴェーダ』紀元前一二〇〇頃》


オルペウス教の祝詞では、お互いに「牛」であり「蛇(ディオニュソスは蛇、牛、子鹿、山羊、彪などに変身する)」である至高神父子の関係を「雄牛は蛇の父親、蛇は雄牛の父親」と説明します《Forerunners And Rivals Of Christianity by F.Legge》。ディオニュソスは「この世での仮の姿」であって、その本体(正体)は天界に在る「父なるゼウス」そのものなのです。


もともと ゼウス信仰は各民族の天空神信仰を組み合わせたもので、インドの「ディアウス(牛神)」、ゲルマンの「トール神(雷と稲妻の神、雄牛神)」、メソポタミアの「(アン)ズー(稲妻を投げつける嵐の鳥神)」、クレタ島「ザグレウス(大母神レアの子、巨人族に殺されて復活する雄牛の神)」などが原型神と言われます。



そしてインド・ヨーロッパ語族共通の神だった牛神ゼウスは、シュメール(民族名未解明、前三〇〇〇頃)の半獣半人の「羊飼い」で女神イナンナ(バビロニア名イシュタル、ペルシア名アナーヒタ)の身代わりに死ぬ〝生け贄神(おそらく「人間神」の原型)〟、セム語族共通の神「ドゥムジ(シュメール神話。バビロニア名タンムーズ、カナン地方では「アドナイ」とも呼ぶ)」と習合することによって、さらに広大な信仰地域を手に入れます。「ドゥムジ(「息子」という意味)」はディオニュソス神の原型、別名「ダム(血)」とも呼ばれるシュメール神話の牧人です。






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