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大国主神(おおくにぬしのかみ)を産み直す創造女神たち
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建速須佐之男命(たけはやすさのおのみこと)の五代の孫である大穴牟遅神(おおなむぢのかみ)は、八十(やそ、「いっぱい」の意味)神と呼ばれるほどたくさんの兄があり、いじめられていた。そして兄弟が競って八上比売(やがみひめ)に婚姻を申し込んだとき、みんなの荷物を担ぎひとり遅れてやって来た大穴牟遅神(おおなむぢのかみ)が婿に選ばれたので八十神(やそしん)は腹を立て、焼いた大石をぶつけ大穴牟遅神(おおなむぢのかみ)を殺してしまった。
母神の刺国若比売(さしくにわかひめ)はこれを嘆き「母の乳汁(ははのちちしる)」という貝の薬で蘇生させた。しかし八十神(やそしん)が今度は伐り倒した大木の裂け目に挟んで再び大穴牟遅神(おおなむぢのかみ)を殺したので、これを助け出し蘇らせた母神は「このままでは、いつか本当に取り返しのつかないことになる」と恐れ、息子を祖神である須佐之男命(すさのおのみこと)のところへ相談に行かせた。
須佐之男命(すさのおのみこと)のいる根の堅州国(ねのかたすくに)へ着いた途端、大穴牟遅神(おおなむぢのかみ)は祖神の跡取り娘須勢理毘売命(すせりびめのみこと)と恋に落ちた。それに気づいた須佐之男命(すさのおのみこと)は大穴牟遅神(おおなむぢのかみ)を一晩目は蛇の部屋に泊まらせ、二晩目はムカデと蜂の部屋に泊まらせて殺そうとしたが、須勢理毘売命(すせりびめのみこと)が呪力のある領巾(ひれ、スカーフのように使う細い薄布)を手渡したので大穴牟遅神(おおなむぢのかみ)は無事、朝を迎えることができた。
すると須佐之男命(すさのおのみこと)は大穴牟遅神(おおなむぢのかみ)を野に連れ出し、矢を探すよう言いつけてから火を放った。しかし大穴牟遅神(おおなむぢのかみ)は地のネズミに助けられ、矢を見つけて生還した。
【日本の神話】大国主神と須勢理毘売命
『古事記』上巻、根の堅州国
⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒『古事記』上巻、根の堅州国
兄弟に殺されるたび母神の慈愛で蘇生される大国主神(大穴牟遅神)は、根の堅州国(ねのかたすくに)でも須佐之男命(すさのおのみこと)に試練を与えられ、明らかに何度も死んでいます。そうして〝創造神〟須佐之男命が「後継者」と決めていた総領娘、〝創造女神〟である須勢理毘売命(すせりびめのみこと)の霊力によって、殺されるたび前より強く産み直されるのです。
だから大国主神は、帰国に際し須佐之男命(すさのおのみこと)から須勢理毘売命(すせりびめのみこと)を盗み出します。そしてそれ以後、前には負けっぱなしだった八十神(やそしん)にも勝ち、死なずに活躍するのです。
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