2019年4月15日月曜日

七層に分かれた天界_「神話と占い」(その35)_






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「天界の覇者」たる至高神
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古代人のイメージでは「天」はたいてい青い丸天井で、その向こうに「七層に分かれた天界がある」と考えました(一三〇七~一三二一頃制作のダンテ・アリギエリ『神曲』にはキリスト教的「十天」が描かれた。天層のありさまは時代を経るほどに細分化され、複雑になってゆく)




◆エノク書

(スラブ語)エノク書』《旧約偽典》では第一天に二○○人の天使、第二天は反抗した天使の牢獄、、第三天は生命の木がある義人の楽園、第四天は太陽と月、第五天は人間の女と姦通した堕天使の牢獄、第六天はミカエル、ガブリエルなど七大天使(ミカエル、ガブリエル、ラファエル、ウリエル、ラグエル、サカラエル、レミエル)の詰所、第七天に神がいます。ローマ建国の父ロムロスが持っていたという「天を区分けする杖」《プルタルコス『対比列伝』など》とは、おそらくこのように天界を階層に分ける杖のことで、ローマ人にとってロムロスがいかに重要な祖霊であったかわかります。


◆イスラム伝承

イスラム伝承(『ハディース』『預言者伝』など)によると神の使徒ムハンマドは天使ジブリール(ガブリエル)に誘われて夜空を駆け(夜の旅=アル・イスラーゥ)、エルサレム神殿の「ヤコブの石」に降ろされた「光の梯子」を伝い天界へ昇りました(昇天=アル・ミラージュ)。ムハンマドは第一天でアーダム(アダム)に会い、第二天でイーサー(イエス・キリスト)とヤフヤー(ヨハネ)に、第三天でユースフ(ヨセフ)に、第四天ではイスハーク(イサク)もしくはイドリース(エノク)に、第五天でハールーン(モーセの兄アロン)に、第六天でムーサ(モーセ)に、第七天でイブラーヒーム(アブラハム)に会い、さらに昇天して神に会うのです。至高神は、当然ながら天層の最上階(最高天)に位置します。


◆新約聖書

『新約聖書』では「神の右に座る」、つまり神とともに「最高天」にあるとされるイエス・キリストが、イスラム伝承で第二天にいることがキリスト教徒は気に入りません。ユダヤ教やイスラム教、キリスト教など一神教は神々の階層を築かないはず、ところが「七天」の考え方はあきらかに「階段」で、本来下位の神々がいるべきところに、等級を付された人間(先祖)や天使がいるだけです。



「天層」はもとはインド・ヨーロッパ語族に発する思想ですが、セム語族の一神教はこれを「〝唯一神の超越性を明らかにする〟七天」として、神学的に完成させました。「七天」は一神教の万神殿です。




~まとめ~

最高天に鎮座ます「至高神」は、「天空神」の性格をも、あわせ持ちます。人間界の「天空」とは「七天」の下方から地面すれすれまでを網羅する実質的な「中空」で、「天層の最上階(最高天)」はなぜかこの「中空」、そして「冥府」へと、直通でつながっているからです。「天界の父」であり最高天に座っているはずのゼウスは、だから同時に「オリュンポスの峰々(中空)から地を覗いている(「覗く」は「見守る」意)」とも描かれます。「神は遍在(矛盾なく、時代にも関係なく同時に何処にでも存在すること。『詩篇』など)する」と言われますが、それは現代風に言えば「最高天から中空・冥府へ、亜空間トンネルが伸びている」からです。中空と冥府に同時に顕れるのは、最高天に坐す「至高神」の証明です。




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