2019年4月9日火曜日

世界樹に吊るされる至高神オーディン_「神話と占い」(その29)_






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中空に吊るされるオーディン
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至高神の地位に昇り詰めるためだけに、自分から望んで中空に吊される、オーディンのような神(北方ゲルマン、北欧神話)も存在します。


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風の吹きさらす木の上で、九夜のあいだ槍に傷ついたまま、オーディン、つまり、わたし自身に我と我が身を犠牲に捧げ、どんな根から生えているのか誰も知らない木(「世界樹=ユッグドラシル」と呼ばれるトネリコの木。北方ゲルマンの世界観)に吊り下がったことを、わたしは、忘れない。

パンも角杯(「ギャラルホルン」という杯で、世界樹の根元にある「ミーミルの泉の水」を呑む神事)も恵んでもらえず、わたしは下を窺っていた。

わたしは、ルーネ文字を読みとった。

(うめ)き、苦しみながら、読みとった。

それから、下へ落ちた。



【北欧の神話】ユッグドラシルに吊り下げられるオーディン
『エッダ』「オーディンの箴言」一三八、一三九
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風神オーディンは、本来豊穣女神(創造神)フレイヤのものであった「ルーネ(ルーンとも)の知恵」を体得するため、九夜の間槍に穿(うが)たれ枝から吊り下げられる荒行に挑みます。九夜というのは古ゲルマンで「出産にあてる忌み日」の期間だったそうです。

我と我が身を生け贄に捧げ、枝から吊り下げられて死ぬ(世界樹の根元へ行ってミーミルの泉の水を飲む)ことでオーディンは「創造神の力(北方ゲルマン神話では「知恵」が「創造神」の資格)」を獲得し、「至高神」としての自分を「出産し直す」のです。

「ルーネ文字」というのは創造神に属するという「〝ありとあらゆる魔力を秘めた〟ゲルマン古文字」で、巨石などに刻まれた現物が今も残っているものの、ほぼ未解明です。同様にケルト人は「オガム文字」の魔力を信じていました(未解読)。日本の「言霊(ことだま)」信仰に似た考えが、ゲルマン人・ケルト人(実際には「文字・数・音声」崇拝は、どの民族にも共通)にもあったようです。






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