2019年4月20日土曜日

母権性社会の真実_「神話と占い」(その40)_






****************
老婆たち(巫女の別称)が牛耳る社会
****************

「太古(石器時代~青銅器時代)、神と言えば女性に決まっていた」「太古の社会は母権制社会だった」などと書くと、ただそれだけで「牧歌的な時代」を思い浮かべ、「平和で幸せ」な社会が実在したと考える人がいるのですが、それは少しばかり性急です。



⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒

◆タシュリトゥ月(十~十一月)の暦

・第一日目
畑で風にあたってはいけない
狭心症を起こすからニンニクを食べてはいけない
・第二日目
悪魔アルダット・リリに見つかるから穴に入ってはいけない
癩病になるから焼いた肉を食べてはいけない

・第三日目
精力を奪われてしまうから女性に近づいてはならない
ワニに襲われるから魚を食べてはいけない
胃病になるからナツメヤシを食べてはいけない
毛虫に襲われるからゴマ畑に灌水してはならない

・第四日目
全身の力を失うことになるから川を渡ってはならない
敵に戦いを仕掛けられるから外出してはならない
頭痛が起きるから牛、山羊、豚の肉を食べてはいけない
腰痛が起きるからロバが歩いたところを踏んではならない

・第五日目
エンリル(シュメールの「大気神」、太陽神アヌの子)の園丁に打たれるから果樹園に入ってはいけない
悪魔シクに捕まるからカラシの葉を食べてはいけない
水腫にかかるから摺り鉢を置いた部屋に入ってはいけない


・第六日目
悪魔ラビツに出会うから争いをしてはならない
便所に入ってはならない
悪魔マミツに出会うから山羊肉を食べてはいけない

・第七日目
ニヌルタ(怪鳥アンズー、もしくは大蛇クルを倒したシュメール・バビロニアの英雄)ニンガル(シュメールの月神ナンナル=バビロニア名シンの妻で自らも「月神」である「快癒の女神」。シュメール名イナンナ=バビロニア名イシュタルの母)禁忌なので、多種類の物を食べてはいけない
神の怒りに打たれるから誓いをしてはならない

・第八日目
清潔な下着を着けて身を浄め大臣を喜ばせなさい
ニンガルがニヌルタを弁護してくれるよう、神前に食物を供えなさい

・第九日目
供儀しなさい
食物を地面に置いて天と地に向けて目を輝かせなさいそうすれば悪は一年中近づかない





【メソポタミアの暦】新バビロニア時代の「暦」
P・アイゼレ『消えた古代文明都市バビロニア』
⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒


粘土板によって明らかになった新バビロニア(前六二五~五三九頃)の、ある九日間の暦を紹介しました。新バビロニアが隆盛であったころは時代的に王の時代(鉄器時代)に当たりますが、暦は神殿祭儀で管理されていたため、メソポタミア古来の伝統どおりだったと類推します。粘土板は断片的にしか残っていないため詳細は不明で、だからこの九日は何かの物忌み期間だった可能性もあるのですが、たとえば残り三五六日のタブーがこの半分しかなかったとしても、現代人にはとうてい耐え難い暮らしです。

迷信深く思い込みの激しい「老婆(「巫女」の別称)」に支配された共同体は、人の自由と尊厳を過剰に制限する「禁忌(タブー)社会」です。いかがでしょう、女性上位であった時代は「牧歌的で幸せ」でしょうか。






0 件のコメント:

コメントを投稿

TOPへ戻る