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「意識」と「無意識」の対立に見る二元論
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ユングは無意識の深淵に「集合無意識」という階層があり、この領域に「原型」と呼べる、民族の共通イメージが蓄積されていると仮定します。曰(いわ)く、「本能」が生得的な動因として行動様式に顕(あらわ)れるのと同様に、「原型」は個体が学習したのではない民族の共通記憶として人の理解の様式に顕(あらわ)れ、我々の思想や感情を根源から支配する何かです。
そしてユングは、「原型」は内的自己(理想の人物像)として夢の中に顕(あらわ)れやすく(夢に現われる内的自己=アニマ・アニムスは「ペルソナの影」と表現される)、ときに自我意識の気づかない危険性や未来予測を提示して、自我意識を救い導く(「補償する」)こともあると主張します。
これを字義通り解釈すれば「原型(ゲルマン民族のヴォータンやジークフリート、大和民族の倭建命=やまとたけるのみこと、など)」の外観を纏(まと)い無意識の深淵(集合無意識)から顔を覗(のぞ)かせる内的自己(アニマ・アニムス)は、自我意識の限界を超え人間能力を超えた〝(自我意識よりは)神に近い存在〟ということになります。そのためユングの仮定を拡大解釈し「ユングは神的存在を科学的に説明した」と、みなす人々がいるわけです。
その理論ではユングの「集合無意識」を心の中の「神の領域」と位置づけ、「集合無意識」のもっとも深層には民族を超越する「共通イメージ=全人類の原型」があるはずで、それが人間の中の神の子(イエス・キリストなど)だと考えるようです。
しかし視点を変え、「〝原型〟の外観を纏(まと)って顕(あらわ)れる内的自己(アニマ・アニムス)」を「〝神人合一したあと下降する〟再生した自分自身」の言い換(か)え、「集合無意識」を「至高神の臨在する〝中空〟」の寓意と解釈すれば、「夢に顕(あらわ)れる内的自己(アニマ・アニムス)が未来を提示して自我意識を救い導く」というユングの主張が「天命の書板(神人合一すると「運命の書板」を覗き見ることができる)」思想のたんなる焼き直しだとわかります。またユングの言う「原型」は、神(第一者)と同じ質料(第一質料=イリアステル)で出来ていながら神から独立して存在するという、心体二元論的「魂」の言い換(か)えにすぎません。
ユングの「意識・無意識とそれを統合する集合無意識」論は、わたしにはたんなる「グノーシス論」の二次使用に見えます。
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「二元論」と「宇宙霊」
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文書に現われる最古の二元論は中国の『詩経(紀元前八〇〇頃~前五〇〇頃)』『易経(同)』で、そこには「地、闇、女性を象徴する〝陰〟」と「天、光、男性を象徴する〝陽〟」とが相互に補完し合い「天、地、人」の三元で機能するという「陰陽二元論」の思想が現われます。
その後ペルシアで創始されたゾロアスター教(紀元前六五〇頃)は、〝アフラ(善)とダエーワ(悪)〟の「善悪二元論」と、〝最後の三千年期(古代ペルシアの宗教では歴史世界は各々三千年で構成される四期から成るとされ、第一期は「霊的創造の期間」、第二期は「物質的創造の期間」、第三期は「悪の侵入による最終戦争の期間」、第四期が「最後の審判までの日々」である。我々の生きているのは最後の三千年期)に訪れる「総審判」において死者が復活し世界は溶鉱炉で浄化される〟という「終末論」、〝天国へ迎えられるも地獄へ堕ちるも個人の自由意志による選択にかかっている〟とする「選択論(紀元前一五〇〇~前一四五〇頃、エジプト『死者の書』以来続く伝統的思想)」に特徴が見られ、「善悪二元論」「終末論」「選択論(自由意志による選択)」は、そのままイスラム教に引き継がれます。
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宇宙の全長は一万二千年。三千年ごとの区切りがあり、最初の三千年で宇宙の霊が創られ、そのあとの三千年で物質が創られ、次の三千年は善と悪が抗争し、最後の三千年で悪が滅びる。そうして宇宙は更新され完全善の幸福が、未来永劫続いてゆく。
原初のとき善神アフラ・マズダは無限の光に包まれ高みに在り、悪神アンラ・マンユは暗黒の深淵に存在した。善神は三六五日かけて天地を、神々や原人カユーマルスを、原初の牛を霊的に創造した。
そのあとの三千年に善神は宇宙を現象界へ移行させたが、このときになって悪神は善神の存在に気づき、光の世界を攻撃しようとした。しかし善神が悪神に「あとの三千年期に雌雄を決しよう」と申し出たため、悪神は引き下がり騙されて眠らされた。
善神アフラ・マズダが創造した宇宙は光り輝いたが、三千年後に悪神アンラ・マンユが目を覚まし、天地を闇で覆った。原人カユーマルスも原初の牛も死に絶え、存在するものはすべて醜くなった。
善神アフラ・マズダは天空のシリウス星を招聘した。雨の神シリウスが大雨を降らせて大地の穢れを祓うと、死んだ原初の牛から穀物と薬草が生まれた。その精液は月へ昇って浄化され、動物が生まれた。死んだ原人の体からはさまざまな金属が生まれ、その精液から最初の男マシュイェーと最初の女マシュヤーナクが誕生した。そうして二人から多くの人間の子孫が誕生した。
最後の三千年期は預言者ゾロアスターの誕生によって始まる。悪が滅びるこの三千年期では一千年ごとに救世主が登場し、三人目が訪れたとき世界は終末を迎える。
ゾロアスターが死ぬとその精液は湖の中に保存され、最初の千年期の開始が近づいたとき水浴に来た十五歳の処女が妊娠、一人目の救世主フシェーダルを生む。さらに一千年後、二番目の救世主フシャーダル・マーも同様に保存された精子からゾロアスターの子孫の中に覚醒する。同様の手順で覚醒する最後の救世主はサオシュヤントである。
覚醒したサオシュヤントはまず死者たちを復活させ人間の善悪を判断する。そこへ巨大な彗星が落ち、地上の金属が溶岩のように流れ出て大地を天の溶鉱炉で焼き尽くす。最後の審判を終えた者たちは天国もしくは地獄へ移動するため、地上を覆う灼熱の金板の上を裸足で渡ることになるが、悪人には熱く善人には冷たく心地よく感じられる。
人間の問題を解決してから、サオシュヤントと善なる神々は悪との最終決戦に臨(のぞ)む。悪神アンラ・マンユは悪魔たちと地獄へ逃げ込むが、溶けた金属が地獄にも注(そそ)ぎ込み地獄の口を塞(ふさ)いでしまう。
悪の勢力はこうして完全に滅び去り、世界は善に満たされ完成形で更新される。その後、地上のすべては善神アフラ・マズダが支配する「善の王国」となる。
【ゾロアスター教】予言者ゾロアスターの終末論
『アヴェスター』「ガーサー」
⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒『アヴェスター』「ガーサー」
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