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古代ギリシアの原始的な星辰(せいしん)と星宿(せいしゅく)
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古代ギリシアはもっとも古い時代、エジプトの太陽暦やバビロニアの惑星学などを取り込み、クレタ島においてザグレウス信仰(ゼウス・ザグレウスとディオニュソス・ザグレウス)を創生したと見られています。クレタ島のミノア文明(紀元前三六五〇頃~前一一七〇頃)はミケーネ人によって簒奪されたあと紀元前一一七〇年頃、地震によって歴史上から消滅、その後ミケーネ文明も滅びたため、「ザグレウス」救出を目指す創生神話がギリシア世界全体へ拡散されました。ただし、すべて推論にすぎません。なお、クレタ人自身も「海の民」として、メソポタアへ侵入したと見られています。
推論になってしまうのは、「前一二○○年のカタストロフ」によって楔形文字「線文字A(クレタ)」「線文字B(ミケーネ)」が消滅して古代ギリシアは一時期文化的に衰退してしまい、文字による記録が何も残っていないからです(「暗黒時代」と呼ばれる歴史的空白期間)。その数百年後メソポタミア起源のアルファベット文字の普及があり、『イーリアス』『オデュッセイアー』など、アルファベットで書かれた文芸作品が登場します。
「線文字A(クレタ)」は未解読のため、ミノア文明については未だわからない部分が多く、プラトンの著作《『ティマイオス』『クリティアス』》で知られる「アトランティス」のモデルではないかと言われるほど、「失われた文明」として知られています。ヒッパルコス(起源前一九○頃~前一二○頃)の四十六星座発見《プトレマイオス『アルマゲスト』より》、「ホロスコプス」の成立(紀元前四○○頃~)と普及(西暦二○○頃~)、プトレマイオス(西暦八三頃~一六八頃)の『テトラビブロス(四書)』よりも、はるか昔の出来事です。
端的に説明してしまうと、「古代ギリシアの神話=クレタのザグレウス信仰」に見る「時代の更新」と「星辰(天体の仕組み)」、「星宿(占星術のこと)」の考え方は、たとえば次のようなものです。ご紹介するのはミトラ教「魂の上昇の道」のレリーフやオルペウス教断片、ピタゴラス断片などから筆者が類推して読みやすく文章化したもので、何かの文献の引用ではありません。現実に存在する文芸作品ではないことを、あらかじめご了承ください。
参考にしたのは、ジョン・R・ヒネルズ『ペルシア神話』、『ソクラテス以前哲学者断片集第Ⅰ分冊』、オウィディウス『変身物語』ピタゴラスの教え、などです。
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「白銀の時代」、第一のディオニュソス・ザグレウスを喰らって焼かれた巨人族(ティタン)の煤(すす)は、創造神ゼウス・ザグレウスが怒りのあまり地上にもたらした洪水(命の水)のせいで、新しい人間(命の木)になった。
天上の神々は巨人族(ティタン)の因果(死と生の苦しみ)を抱(かか)えて生まれてくる「青銅の時代」の人間族を哀れみ、覚醒した個々の魂(ザグレウス)が迷わずに天界へ帰還できるよう、魂(ザグレウス)が通る路(みち)として「太陽の黄道」を準備した。次に個々の魂(ザグレウス)を受け入れるための「天界の門」を黄道の中に設置し、門番として星座を据えた。
天界の門は多様な邪悪性を持つ巨人族(ティタン)に対応すべく十二門用意され、季節ごとにその座を譲り合う。そして巨人族(ティタン)の性質に近い門と門を守護する神々が、季節の変化や祭儀や歌舞音曲、神威や天罰の顕現などあらゆる方面から働きかけ、巨人族(ティタン)に眠らされている人間の魂(ザグレウス)へ覚醒を促(うなが)すことになる。一方、毎年女神デメテルの下に生まれる第三のディオニュソスは穀物(イアッコス)として、葡萄酒(バッコス)として、人間の一生にその身を捧(ささ)げてくれるのだ。
魂(ザグレウス)の上昇は基本的に生命を離れたときに実現するが、オルペウス教の祭儀や精進潔斎(しょうじんけっさい)を通じ、生前に覚醒することもまた、可能である。
死後に冥府の川を渡るには、まずは火葬堆(かそうづみ)の炎で燃やされなければならない。渡し守の舟を降りると、そこには黒楊樹(こくようじゅ)と柳の木に覆われた黒いペルセポネの森が広がり、その下に左右に分かれた細い道がうっすらと見えるだろう。左側には冥府の館(やかた)があり、白い糸杉とそこから湧き出す美しい泉が見えるはず。だがそれは忘却(レテ)の泉なので、そこへ近づいてはいけない。
右側に目を向けると暗闇の中に記憶(ムネモシュネ)の泉があり、泉の管理者(ガーディアン)が立っている。そこへ行き「わたしは喉が渇いています。水をください」と、言いなさい。身分を聞かれるので「大地(ゲー)と天空(ウラヌス)の息子です」と、答えなさい。水を呑んだら戻って冥府の館(やかた)へ入りなさい。
死者はここで冥界女王ペルセポネと冥界神ハデスになった第二のディオニュソスの審問に答える必要があるが、泉の管理者(ガーディアン)が伝えてあれば審問はごく簡単に終わるだろう。審問を無事に終えればただ館(やかた)を出れば良く、エリュシオンへは記憶(ムネモシュネ)の泉を源泉とする、川に沿って行くだけだ。なだらかな上り坂を歩いているといつの間にか暗い森へ陽(ひ)の柱が燦々(さんさん)と射(さ)し込み、白いポプラの生(お)い茂る明るい丘が見えてくる。それがラダマンティスの統治する、あなたの「至福者の島(エリュシオン)」である。あなたはそこで、次なる時代を待つことになる。
巨人族(ティタン)に呑み込まれた第一のディオニュソスの欠片(かけら)がすべて回収され父なるゼウスに同化し終わるとき、創造神ゼウスは巨人族(ティタン)を幽閉した、冥府の一隅「闇(タンタロス)」を滅ぼすだろう。こうして青銅の時代の人間族が犠牲獣の血を呑むことで始まった「鉄の時代」も終わりを告げ、世界は再び「黄金の時代」を迎えることができるのだ。
【ギリシアの神話】古代ギリシアのクレタにあったらしい原始的な占星学
オルペウス教断片、ピタゴラス断片など
⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒オルペウス教断片、ピタゴラス断片など
断片と断片をつなぎ合わせた文章をご覧いただきました。どうしてこんなことをしたかというと、後日公開する『ヨハネの黙示録』の終わり部分が、ほぼこの反転になっているからです。『ヨハネの黙示録』は命の水と命の木が、キリストのもとでは万民に与えられると訴えます。この復元文章を『ヨハネの黙示録』の前に是非、ご覧いただきたいと思ったのです。
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