2019年5月9日木曜日

ヨハネの黙示録・大淫婦の裁き_「神話と占い」(その59)_





こちらのイラストは上月まことの作品です。コピーや配布、二次使用には許諾を得ていただくよう、お願いします。



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女神たちを制御すること
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父権制時代の為政者たちは、あの手この手で創世神話に改変を加えました。たとえば女が先に生まれなければ意味の通じない「神産み」を「先に原初の男が生まれ、その男が原初の女を産み、原初の女がまた原初の男を産む「という「互いが互いを産み合う(生命の永遠の循環を表すともいう)」形式(『リグ・ヴェーダ』プルシャスの章など)に改めたり、「混沌が、秩序を」産んだり《ヘシオドス『神話』など》、「無が光を」、「光が男と女を」、「男と女が人間を」産むという、「無性の存在が前もって生まれる」形式を物語世界に創り出しました《『旧約聖書』など》


ところで「人間性の尊重(ヒューマニズム)」に目覚め逆襲してはみたものの、男性たちは女性の創造力まで疑ったわけではありませんでした。そこで何とかして彼女たちの力を支配し、利用しようと試みます。たとえば『コーラン』は「(アッラーが)太陽と月とを使役する《第一六節一二》」、「(アッラーが)太陽と月とを押さえつけたので、どちらも一定の時限どおりに走るようになった《第三一節一六》」と繰り返します。男性たちは惑星に象徴される女神たちの霊力を「押さえつけ」、「使役」する方法を模索するのです。


遺跡のレリーフや土偶で確認できる女神イシュタルなどメソポタミアの女神たちは、「首輪」や「腕輪」「足輪」など、たくさんの輪状の装飾品で飾り立てられています。言ってみればこれは「女神の霊力封じ」であって、神霊の放出部分と信じられていた手や足や指先を「輪」で拘束することにより、放っておけば何処へ行ってしまうかわからない奔放な女神たちを神殿内に留め置き、必要なときだけその力を利用しようというご都合主義の管理法でした。これは母権制時代、女性たち自身が創った「秩序」です。


「指輪」「腕輪」などあらゆる「輪」は、イメージ上ではふたつの心理を象徴すると言われます。そのひとつが「創造の力」で、これは輪の中心が空洞で「子宮」もしくは「黄道(太陽の軌道)」を連想させるところに発するイメージです。もうひとつの「束縛」は、奴隷の手足を「輪」で拘束したことに起因するイメージです。「創造の力」とはつまり「全知全能の力」ですので、「輪」は「全知全能の力を抑制する、全知全能の力」という意味になります。


古代人の考え方では「創造神自身が、創造神を産む」のです。すると「暴走する創造神を抑制できるのは、創造神自身」でしか、あり得ません。


彼らにとって神は惑星なのであり、創造のエネルギーというものは、絵に描いたならば放射状に広がる無限の光です。そんな無軌道なものは、人間には利用できません。太古の昔(~新石器時代)、巫女たちが女神を「輪」で拘束したのは「神の流出力を一定方向に制限する」ため、そうして「利用しやすくする」ためでした。「創造=流出」と「束縛=抑制」という、相反するエネルギーのぶつかり合いを象徴するものが「輪」なのです。




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わたしは一位の天使に荒野へ連れてゆかれ、水の畔で赤い獣にまたがる淫(みだ)らな女を見た。獣は神を冒涜するあらゆる名前で覆われており、七つの頭と十本の角があった。女は紫と赤の衣をまとい、金と宝石と真珠で身を飾って、手には淫行に満ちた金杯を捧げていた。その額には「大バビロン、地上のすべての忌まわしい者たちの母」という奥義のモノグラム(組み合わせ文字、「バビロン」の守護神イシュタルを指す。ただしここでは「バビロン」は淫らな都「ローマ」の寓意)が刻まれ、聖人とイエスの殉教者たちの、生き血に酔い痴れる売淫だった。

天使は言う。
「水辺は国とその属州、七つの頭は(ローマの)七つの丘の七人の皇帝、十の角はまだ国を持たない(蛮族の)王である。彼らは獣と同様に王の地位を獲得し、やがて獣に自身の権威を委(ゆだ)ねることになる。獣はかつて七人の王のひとり(暴君ネロ)であったが今は不在で、これから再び滅びのために現われる八人目の王(皇帝ドミツィアヌス)を意味する。


彼らは仔羊たち(キリスト教徒)と戦うが、主の中の主、王の中の王たる神が選んだ、仔羊たち(キリスト教徒)が勝つ。

すると十の角とあの獣は大淫婦を憎んで装飾品を剥ぎとり、裸にむしってその肉を喰らい、焼き尽くすだろう。神は御旨(みむね)の実現のため、サタン(=獣)に王権を授けるのである」

そこへ別に一位の天使が降りてきて叫んだ。
「倒れた!  大バビロンが倒れた!今や悪と穢(けが)れと鳥の巣窟に成り果てた!彼女と交わって淫(みだ)らな葡萄酒を呑み、(みだ)らな行いに耽(ふけ)って富を築いたからである」

また天から声が降り注(そそ)いで言うには
「我が民よ、その町を出て罪にあずからぬようにせよ。疫病、悲しみ、飢えが一日のうちに現われ、その町はいずれ焼き尽くされる。聖人、使徒、預言者たちよ、喜べ。主たる神はこの町を罰し、其方(そなた)たちの復讐を遂(と)げた」と。

するとわたしは、天上に大群衆の声を聞く。
「ハレルヤ!  我らが神は地上を堕落(だらく)させた大淫婦(だいいんぷ)を裁き、僕(しもべ)たちの血の復讐を成し遂(と)げられた。」

「ハレルヤ!  大淫婦(だいいんぷ)を焼き尽くす煙は世々、永遠に立ち昇る。アメン、ハレルヤ!  」




【キリスト教】囚われ、裁かれる太母神
『新約聖書』「ヨハネの黙示録」大淫婦の裁き
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