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樹木信仰と十字架
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ひと言で「樹木信仰」と言っても、その発現は一様ではありません。宗教として成立したわかりやすい例だけ列挙しても樹木神信仰の代表格である「ディオニュソス信仰・オルペウス教」と、その宗教モチーフを踏襲した「キリスト教」や「イスラム教」、これらの宗教に大きな影響を与えた「仏教(ジャイナ教の方)」が存在します。
共通するのは至高神の子として誕生し、予言の力を示したせいで断罪される半神(「人間神」「権現」ともいう)の試練が語られる点と、神の顕現を樹木で表現する教義です。ディオニュソス信仰は葡萄の木(もしくはマツ、アカシア、ギンバイカなど)、オルペウス教・キリスト教は無花果など(オルペウス教は柳、マツ、無花果=いちじく、葡萄など。キリスト教は無花果=いちじく、アカシア、シュロ、葡萄など)、イスラム教はオリーブと菩提樹、仏教も菩提樹を聖別します。
オルペウス教徒は芽吹いた枝で出来た人形(ひとがた)を「十字架」と呼んで持ち歩きましたが、それは古代「十字」が「因果応報の車輪」を意味したからです。「車輪」は古代(石器時代~歴史時代初期)において「太陽」を表すモチーフで、黄道(地上から見る太陽の軌道)を離れられないその属性が「宿命」を、毎日死んで甦る(日没と日の出)属性が「輪廻」を寓意しました。
彼らにとって「人間存在」は巨人族とディオニュソスとの不幸な合体の産物であり、人間の出会う苦難はすべて、巨人族がザグレウス=第一のディオニュソスを殺して食べたことに起因する「因果応報」、つまりは「原罪」の報(むく)いなのでした。
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アルゴー船の冒険の英雄であり、音楽の神ムーサの息子であるオルペウスは、新妻エウリュディケが蛇に噛まれて亡くなると冥府へ行って冥府神・プルートーンを得意の竪琴の音色と詩でもって説き伏せた。プルートーンは地上に出るまで妻を見ない約束でエウリュディケを詩の返礼の贈り物に与えたが、地上に近づくとオルペウスは不安になり振り返って妻を見た。妻は途端にずるずると後退し、再び地の底へと引き戻されて行った。彼女は、消え行く声で「さようなら」と言った。
地上へ戻ったオルペウスは女性を愛せなくなり、かりそめの恋の相手に歳若い男性を求めるようになる。ディオニュソス神の祭儀の仕事に就いていたが、女性への冷たい態度を恨まれて狂女(マイナス)たちの餌食となって死に、その首は詩人の島・ギリシアのレスボス島へ流れ着いたという。
【ギリシアの神話】オルペウスの冥府降り
アポロドロス『神話』第一巻第三章ムーサの子孫
オイディウス「変身物語」オルペウスとエウリュディケ
など
⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒アポロドロス『神話』第一巻第三章ムーサの子孫
オイディウス「変身物語」オルペウスとエウリュディケ
など
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