樹木は「多産のシンボル」として信仰されます。ヨーロッパ諸国の「陽柱(「五月柱=メイ・ポール」「ヘルメス柱」ともいう)」や、古代インドの菩提樹の聖霊ヤクシニー・ヤクシャへの信仰(多産豊穣・病気治癒・子孫繁栄)などが有名です。
樹木が「多産のシンボル」である理由について、天空神の男根(樹木のこと)が大地の女神の子宮(地面の下にある「冥界」のこと)へ差し込まれ、まさに生命を生み出そうとしている瞬間に見える(これを「世界軸」とか「地軸」などと呼ぶ)から、などと説明されていますが、はっきりしたことはわかりません。
ひとつだけ確かに言えるのは樹木信仰の起源は女神信仰にあり、女神信仰において「芽吹く〝花〟=神の子」は、女神(樹木)の受胎と出産(「実り」=女神の降臨)を促す「受精の象徴」だということだけです。
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人類が最初に手にした武器
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前述したとおり枝を加工して作った杖は「二足歩行の記憶」であると同時に「最初に手にした武器の記憶」でもあり、強さの象徴です。
柔術と柔道のどちらが強いのか実践向きなのか今に至っても結論が出ないように、寝技(よつんばい)が強いか立ち技が強いかという議論に明確な回答は用意されていませんが、それでも立ち上がって戦えば武器を使うことができたので、腕っぷしに自信がなくとも、頭の回転が速い者には勝利の可能性が生まれました《『旧約聖書』少年ダビデの武勇伝など》。 このことはそれ以前とは比較にならない大変化であり、君主時代の始まりを強く促す人間改革だったと言われます。
原史時代(原始~新石器時代)においては、単純に二足歩行に早く慣れた者ほどより早くより強くなることができ、王権を掌握できたのです。 最初の武器としての杖はその後「こん棒(ヘラクレスのこん棒、光の戦士ミトラのグルズや嵐神インドラ・仁王の金剛杵=ヴァジュラ)」に変化し、やがて神の勝利を表す「聖剣」や「王笏」として、西洋版三種の神器「王権神授の象徴」にとり入れられました。
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王権を象徴する杖
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王権と結びつく杖(青銅器時代~歴史時代)の例としては、天界を区分する杖を持ち、自在に空の鳥を操ったという〝ローマ建国の父〟ロムロスの伝説《プルタルコス『対比列伝』など》や、指導力を示すため民衆を集め杖を振るって岩を打ち、泉を湧き出させた〝指導者〟モーセの逸話《『旧約聖書』》などが有名です。
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出エジプト後何年も経ってイスラエルの民がツィンの荒野に入ったときのこと、その土地には水がなかったので、共同体はモーセとモーセの兄アロンに逆らった。困ったふたりが幕屋の入り口へ行って平伏すと、主の栄光が顕れ「杖を取り、会衆の前で岩に向かって水を出せと命じなさい」と告げた。そこでモーセが会衆の前で手を上げ岩を杖で二度打つと、どっとばかり水が出て共同体は救われた。こうして主は自身が聖なることを示した。
しかし主の栄光に縋る前に主の聖なることを民に告げず、最初にその味方をしなかったモーセは主の許しを得ることができず、イスラエルへ入ることを禁じられた。
【ユダヤ教】『旧約聖書』民数記二十「メリバの水」
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