2019年3月17日日曜日

アポロドロスが描いた第二のディオニュソス_「神話と占い」(その6)_






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アポロドロス「神話」アゲノールの後裔
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ディオニュソス(第二のディオニュソス)は至高神ゼウスの御子として処女セメレに宿るが、ゼウスの正妻で地母神ヘラの策略によって、誕生前母と一緒に焼け死んだ。ゼウスは死んだセメレの胎から御子(みこ)をとり出して蘇生させ、自らの太股に隠し、月が満ちるのを待って再び誕生させた。ディオニュソスは妖精たちの手で養育され、葡萄の栽培方法を確立して「酒神」の地位を獲得する。しかしそれが女神ヘラの癇に障ったのか、美しく成長し青年神となったディオニュソスはヘラの呪いを受け、突然狂気に陥った。


狂った酒神は馬足のシレノスや半人半山羊の牧神パン、同じく半人半山羊のサテュロスたちを随行者にあてどもなく世界を巡り歩き、葡萄酒とその効能を広めてまわった。あるときディオニュソスは非業の死を遂げた母セメレを神にしてやりたいと思い立ったが、冥界へ続く道を知らなかった。そこへポリュムノス(「賛歌多き者」の意、ディオニュソス自身の敬称)という男が現われると、ディオニュソスに恋をしたあげく「若さを授けてくれるなら道を教えよう」と請け負った。酒神は男に「女として身を捧げる」ことを約束した。


ディオニュソスは男に教わったとおりレルネー(ギリシア・アルゴス地方)の底なし沼から冥界へ下り、ミルトの木(別名ギンバイカ)と交換に死んだ母を取り戻す。さて地上へ戻って約束を果たそうとしたところ、ポリュムノスは待ちくたびれて既に死んでいた。ディオニュソスは彼のために男根柱を建てて弔いごとをし、母セメレを女神テュオネーとして天上へ上げ、不滅の神々のあいだに座らせた。


やがてディオニュソスはゼウスの母女神レア(キュベレー)の前でひざまずき、ヘラの呪いを浄められた。正気に返った至高神の嫡子はその後は自ら地下へ降り、冥界神として鎮座した。



【ギリシア神話】月の乙女セメレ、第二のディオニュソス
アポロドロス『神話』アゲノールの後裔
パウサニアス『地理史』第二巻六章アルゴリス
など
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前回記事とあわせ、ギリシア・ローマ神話に現われる酒神物語の概略を紹介しました。因みに、日本ではこの神はギリシア名「ディオニュソス」、ローマ名「バッカス」だという解説が一般的ですが、本当のところ同じ酒神の「美しくて愉(たの)しい」相が〝ディオニュソス〟、「横暴で残酷な」相が〝バッカス〟です。おそらく酒の持つ二面性「〝愉快さ〟と〝突発的な狂気〟」を表現するものでしょう。






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