2019年3月27日水曜日

オルペウス教の入信儀式(イニシエーション)_「神話と占い」(その16)_







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オルペウス教の入信儀式
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初期教会では「十字架」を「イエス・キリストが信者の魂を救済すべく地獄へ降り、また昇天するときに随行する〝生きた実在〟《新約外典『ペトロ福音書』『シビュラの託宣』より、『キリスト教史1 初代教会』》」と考えますが、これはオルペウス教「柳の杖(芽吹いた小枝で作った人形)」とまったく同じ教えです。

秘儀・密儀だったためすべて推測にすぎませんが、パピルスや古代人の墓から出土した金板に記された記述に鑑みるに、オルペウス教の入信儀式「冥府降り(めいふくだり)」では、死んだ妻エウリュディケを救うべく、「柳の杖=小枝で作った十字架杖」を頼りに冥界へ降った、オルペウスの伝説を模倣したようです。



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(1)
小枝の十字架(人形=ひとがた)を持って洞窟へ入る。

(2)
冥界女神ペルセポネ役の巫女に「大地(ゲー)と天空(ウラヌス)の息子」と自己紹介することで「魂の覚醒」と「因果との決別」を宣言する。ちなみに、ゲーとウラヌスの子というのは、ディオニュソス神を寓意するらしい。

(3)
冥界の沼「記憶の水(ムネモシュネ)」を模した泉の水を呑んで魂を浄化する。「忘却の水(レテ)」ではなく「記憶の水(ムネモシュネ)」を飲むのは、永遠の園(エリュシオン)へ行くための準備である。

(4)
巨人の質(肉体)を弔う意味で十字架に火がかけられ、全信者強制参加の狂乱の舞踊(狂宴=オルギア)に呑み込まれる。


【オルペウス教を記した金板】オルペウスの入信儀式(イニシエーション)
「ソクラテス以前哲学者断片集 第I分冊」第一章 オルペウス
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「ディケ」はギリシア世界で「運命・宿業」を表す女神です。そこからオルペウスの「死んだ妻」というのが、死んだも同然である「魂」の寓意とわかります。つまり開祖オルペウスは妻を救いに行くと見せかけ、その実「みずからの宿業(原罪)を冥府の泉水で雪(すす)ぎ浄(きよ)めに行った」わけです。


「火と水」を用いて「魂の浄化」をする思想は、「死と再生」を促すためエジプト・メソポタミアの女神神殿で行われていた、古い祭儀に起源があります。オルペウス教もこれに倣(なら)い、火と水による「原罪の浄化」と、禁欲と狂乱を繰り返すことによる「肉体解脱」の二方向から、「因果応報からの完全離脱=自己の永遠化」を試みていたと思われます。






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