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神(としがみ)の両性具有性
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歳神(としがみ)イアッコスやアッティスは十二月二十五日の「冬至の日」箕篭に入って顕現し(母親の胎を通過しない→処女出産)、三月二十二日か二十三日非業の死を遂げ、「春分の日」民衆の歓喜の声に包まれながら復活します。
「歳神(としがみ)」とは、つまるところ「花」の化身です。彼らは三月二十四日か二十五日に甦りますがそれは穀物の「実」としてのことで、母である穀物神に同化(合一)して復活するのであって、本人が帰ってくるわけではありません。母女神たちは、「花」が受精してくれないと「実」に変身できないのです。
また、ディオニュソス(=童神イアッコス、ただしディオニュソス神自身の生誕祭は一月六日)やアッティスがときにホモセクシュアル的・両性具有的に表現されるのは、雌雄同株が普通である植物の特性を表現したものと言われます《フレイザー『金枝篇』》。
古代ギリシアで行われたアッティス(アテネ、アッティカの語源)の祭りでは、花のまま死んだ歳神(としがみ)を悼む「葬式」と、母女神に同化して復活したことを祝う「復活祭」とが連続で催され(ヒラリア祭)、特に「葬式」の方で十字架が用いられました。
葬式の翌日三月二十五日は、歳神が母神に同化する「受胎日」でもあります。前の歳神(としがみ)は「果実になって消滅」し、この日新しい歳神(としがみ)が母の身体に宿るのです。
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三月二十二日、祭司たちは聖森から松の大木を伐り出すと、アッティスの人形(十字架)とその血を表すスミレの花をあしらい、しずしず と市内を通過する。三月二十四日、洞窟の中の女神の祭壇では運び込んだ松の木と人形(十字架)へ炎が放たれ、祭司長が腕を傷付けて己が生き血を捧げるや、興奮した若い下級祭司たちは自分から次々と去勢し、切りとった男根をキュベレーの神像へ投げつけるのだ。
【ローマの風習】アッティスの葬式
サー・ジェイムズ・ジョージ・フレーザー『金枝篇』
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古代のギリシア・ローマは火葬文化ですから、これは弔(とむら)いの炎です。死んだアッティスを煙に変えて天上界へ送り、一過性の「歳神=人間神」を、不滅の神々のあいだに列席させようというのでしょう。古代人は役目を終えた旧(ふる)い歳神(としがみ)を昇天・消滅させることで、新しい歳神(としがみ)を招来(しょうらい)し、季節の巡りを促進できると信じていたのです。
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